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ミクロな世界を支配する「量子論」の世界は非常に奇妙です。粒子と波が「重ね合わせの状態」で共存したり,「トンネル効果」によって粒子が壁を一定の確率ですり抜けたり,粒子の位置と速度が同時に決まらなかった り─。こうした現象は,私たちの直感や常識では説明できず,まるで「パラドックス」のようです。パラドックスとは,正しくみえる前提や論理から納得しがたい結論が得られてしまう問題のことです。 量子のパラドックスには,名だたる科学者も頭を悩ませました。アルバート・アインシュタインは量子論の奇妙さに納得がいかず,その矛盾をつくために「量子もつれ」という概念を提唱しました。エルヴィン・シュレーディンガーも量子論の確率的な解釈に疑問を呈し,その奇妙さを強調するために「シュレーディンガーの猫」とよばれる思考実験を生みだしました。 量子のパラドックスがみちびきだす奇妙な結論を,私たちはそのまま受け入れるしかないのでしょうか? 次号の特集では,量子論に登場するさまざまなパラドックスを通して,この世界の不思議にせまります。
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●量子論のすべてがここにつまっている─ファインマンがそう表現した「二重スリット実験」 ●ビリヤードボールがあらゆる方向に進む─そんな不可解なことがおきるのが量子の世界 ●量子論の矛盾をつくために考えられた「量子もつれ」は皮肉にものちに正しいことが証明された ●量子テレポーテーションで転送した自分は本当に「自分」なのか? ●量子論の多世界解釈が正しければ,「量子ロシアンルーレット」も怖くない ●ホーキングとベッケンシュタインの「ブラックホールと情報のパラドックス」をめぐる賭け
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生命とは何か。この問いは,科学者たちを魅了してきました。近年,新しい手法でこの問いにせまる研究者たちがいます。なんと,生命を人工的につくりだそうというのです。2010年に,人工的に合成したゲノムを用いて細菌を作製することに成功しました。2025年,生成AIを用いて,これまでに存在しなかったタンパク質をつくりだすことに成功しました。人工生命の誕生の日は近いのでしょうか。次号第2特集では,人工生命誕生の可能性を検証します。
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●2010年,「人工細菌」誕生の衝撃 ●目覚ましい発展をとげる生成AIが,「人工タンパク質」を生成した ●進化を人の手で再現する「進化分子工学」とは何か? ●デジタルデータをDNAに保存する新技術「DNAストレージ」とは?
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